【エファ通信(つうしん)  233号(ごう)】    国(くに)に残(のこ)された本(ほん)は僅(わず)か500冊(さつ)

カンボジア国立図書館 内戦の戦火を免れ残った500冊の本の一部

こんにちは。エファジャパン事務局(じむきょく)です。

今号(こんごう)でも海外(かいがい)事業(じぎょう)担当(たんとう)・鎌倉(かまくら)幸子(さちこ)のカンボジア訪問記(ほうもんき)を紹介(しょうかい)いたします。今回(こんかい)はカンボジアの図書館(としょかん)にまつわる物語(ものがたり)です。

皆(みな)さんは、今(いま)まで大切(たいせつ)に保管(ほかん)してきた国(ぐに)の蔵書(ぞうしょ)が突然(とつぜん)失(うしな)われるという事態(じたい)を想像(そうぞう)できますでしょうか?    カンボジア内戦後(ないせんご)、国立(こくりつ)図書館(としょかん)の書架(しょか)を覗(のぞ)くと、そこに残(のこ)された本(ほん)は、たったの500冊(さつ)・・・

(上記(じょうき)写真(しゃしん)は500冊(さつ)の一部(いちぶ)です)。

それが現実(げんじつ)に起(お)きた現場(げんば)で、再度本(さいどほん)を集(あつ)め、国(くに)の文化(ぶんか)を守(まも)るべく奮闘(ふんとう)している国立(こくりつ)図(と)書(しょ)館(かん)員(いん)の物語(ものがたり)を、ぜひご一読(いちどく)ください。

(事務局(じむきょく))

「消滅(しょうめつ)の危機(きき)にある  文化(ぶんか)を守(まも)る」使命(しめい)

カンボジア国立図書館

暗黒(あんこく)政権(せいけん)は国民(こくみん)から本(ほん)を奪(うば)った

カンボジア国立(こくりつ)図書館(としょかん)は、インドシナのフランス植民地(しょくみんち)政策(せいさく)により1924年(ねん)に設立(せつりつ)されました。カンボジアが1953年(ねん)にフランスから独立(どくりつ)した後(あと)も、「国立(こくりつ)図書館(としょかん)」として、多(おお)くの方(かた)に向(む)けて  門戸(もんこ)を開(ひら)いてきました。

独立後(どくりつご)の1950年(ねん)〜60年代(ねんだい)は、カンボジア文学(ぶんがく)の黄金期(おうごんき)。多(おお)くの作家(さっか)が活躍(かつやく)し、多(おお)くの本(ほん)が出版(しゅっぱん)されました。

しかし1975年(ねん)に政権(せいけん)を取(と)ったポル・ポト時代(じだい)、国立(こくりつ)図書館(としょかん)は軍(ぐん)の倉庫(そうこ)や養(よう)豚(とん)場(じょう)として使(つか)われます。そして焚書(ふんしょ)政策(せいさく)を取(と)った政権(せいけん)により、国立(こくりつ)図書館(としょかん)は蔵書(ぞうしょ)の多(おお)くを失(うしな)いました。

そして、当時(とうじ)働(はたら)いていた図書館(としょかん)職員(しょくいん)のほとんどが殺害(さつがい)されました。

 

文学の黄金時代に出版された本

 

「文化(ぶんか)を守(まも)る・残(のこ)すことは私(わたし)の使命(しめい)です」

「ポル・ポト時代(じだい)を生(い)き抜(ぬ)いたクメール語(ご)の本(ほん)は 500冊(さつ)しかありません」

このお言葉(ことば)とともに館長室(かんちょうしつ)の奥(おく)にある倉庫(そうこ)へ私(わたし)を案内(あんない)してくれたのは、カンボジア国立(こくりつ)図書館長(としょかんちょう)のクノット・ヴィボラさんです。

500冊(さつ)の本(ほん)を目(ま)の当(あ)たりにすると、すでに変色(へんしょく)していて、触(さわ)ると崩(くず)れてしまいそうです。

「現在(げんざい)、力(ちから)を入(い)れているのがデジタル化(か)です。特(とく)に内戦(ないせん)の前(まえ)に出版(しゅっぱん)されたものをデータ化(か)する作業(さぎょう)を、急(いそ)いでいます。いま取(と)り組(く)まなければ、消滅(しょうめつ)してしまう物語(ものがたり)があるでしょう。文化(ぶんか)を守(まも)る・残(のこ)すことは私(わたし)の使命(しめい)です」

 

カンボジア国立図書館長のクノット・ヴィボラさん

 

美(うつく)しい壁画(へきが)を見(み)て湧(わ)いた希望(きぼう)

クノット・ヴィボラさんは、ポル・ポト時代(じだい)の1976年(ねん)、14歳(さい)の時(とき)に両親(りょうしん)と6人(にん)の兄弟(きょうだい)姉妹(しまい)を亡(な)くし、家族(かぞく)で唯一(ゆいいつ)の生存者(せいぞんしゃ)となりました。

その後(ご)は親戚(しんせき)に引(ひ)き取(と)られます。幸運(こううん)にも親戚(しんせき)は、我(わ)が子(こ)のように教育(きょういく)を受(う)ける機会(きかい)を、提供(ていきょう)してくれたそうです。

「私(わたし)は大学(だいがく)で美術(びじゅつ)の勉強(べんきょう)をしていました。

1987年(ねん)に国費(こくひ)留学生(りゅうがくせい)として留学(りゅうがく)したポーランドでは、文書(ぶんしょ)資料(しりょう)保全(ほぜん)について学(まな)び、修士号(しゅうしごう)を取(と)ることができました」

その後(ご)、王宮(おうきゅう)や情報省(じょうほうしょう)での勤務(きんむ)を経(へ)て、2002年(ねん)よりカンボジア国立(こくりつ)図書館(としょかん)の館(かん)長(ちょう)を務(つと)めています。

「内戦(ないせん)が終(お)わり、一人(ひとり)ぼっちになった自分(じぶん)の将来(しょうらい)を考(かんが)えると、何(なに)も見(み)えない暗闇(くらやみ)の中(なか)に取(と)り残(のこ)された気持(きも)ちになりました。

ある日(ひ)、ふと目(め)にしたカンボジアの遺跡(いせき)の壁画(へきが)を、私(わたし)は“美(うつく)しい”と思(おも)いました。

“あぁ、カンボジアには美(うつく)しいものがまだ残(のこ)されているんだ。だったら私(わたし)は、この美(うつく)しいものを守(まも)り、残(のこ)していこう”

そう心(こころ)に決(き)めると、生(い)きる気力(きりょく)が湧(わ)き上(あ)がってきたのです」

 

カンボジア国立図書館入口のゲート

カンボジアの出版(しゅっぱん)の未来(みらい)を作(つく)るために

文書(ぶんしょ)資料(しりょう)保全(ほぜん)に全力(ぜんりょく)を尽(つ)くす、そんなクノット・ヴィボラさんも定年(ていねん)まであと3年(ねん)です。

「カンボジアの国立(こくりつ)図書館(としょかん)は1924年(ねん)に建設(けんせつ)された当時(とうじ)の建物(たてもの)を使(つか)っています。歴史的(れきしてき)建造物(けんぞうぶつ)として残(のこ)すべきだと思(おも)います。ただ…書庫(しょこ)がないのです」

カンボジアの国立(こくりつ)図書館(としょかん)は平屋建(ひらやだ)て。地下室(ちかしつ)も、納本(のうほん)される本(ほん)を管理(かんり)する場所(ばしょ)もありません。

資料(しりょう)を残(のこ)していくためにも、本(ほん)の保管(ほかん)ができる建物(たてもの)の増設(ぞうせつ)を行(おこな)いたいと国(くに)に要請(ようせい)を出(だ)していますが、なかなか進(すす)まないそうです。

「ポーランド大使館(たいしかん)に押(お)しかけ、図書館(としょかん)の増設(ぞうせつ)計画(けいかく)の話(はなし)をしました。他(ほか)にもあたっていますが、よい返事(へんじ)はまだもらえていません」

あと3年(ねん)の間(あいだ)に、増設(ぞうせつ)の道筋(みちすじ)だけでもつくりたいと、焦(あせ)る気持(きも)ちを抱(かか)えながら日々(ひび)の業務(ぎょうむ)を行(い)っていました。

私(わたし)が図書館(としょかん)を去(さ)る時(とき)に、うれしいお誘(さそ)いを受(う)けました。

「今(いま)、納本(のうほん)制度(せいど)を始(はじ)めました。出版社(しゅっぱんしゃ)から1タイトルにつき5冊(さつ)の納(のう)本(ほん)を受(う)けています。

また、出版(しゅっぱん)文化(ぶんか)の発展(はってん)のため、図書館(としょかん)では毎年(まいとし)12月(つき)にブックフェアを開催(かいさい)し、読書(どくしょ)の楽(たの)しさを知(し)ってもらう取(と)り組(く)みをしています。

もしよかったら12月(つき)にカンボジアに来(き)ませんか?」

皆(みな)さんもカンボジアの出版(しゅっぱん)のことを知(し)るために、そしてクノット・ヴィボラさんに会(あ)いに、カンボジアに来(き)ませんか?

 

(鎌倉(かまくら)  記(き))

リサイクル募金(ぼきん)、受付中(うけつけちゅう)!

身(み)の回(まわ)りの不要品(ふようひん)を、社会(しゃかい)貢献(こうけん)へ

 

エファジャパンリサイクル募金

 

現在(げんざい)エファジャパンでは、カンボジア・ラオスの障害(しょうがい)がある子(こ)どもが使(つか)う教材(きょうざい)の開発(かいはつ)事業(じぎょう)を行(い)っています。上記(じょうき)  国立(こくりつ)図書館(としょかん)のクノット・ヴィボラさんに日本(にほん)の障害児(しょうがいじ)関連(かんれん)図書(としょ)をお見(み)せしたところ、「カンボジアの皆(みな)さんにも、このような本(ほん)があることを知(し)って欲(ほ)しい」、「国立(こくりつ)図書館(としょかん)にも、このような本(ほん)を置(お)きたい」と大(おお)いに関心(かんしん)を示(しめ)してくれました。

 

この事業(じぎょう)を始(はじ)め、エファの活動(かつどう)のため、通年(つうねん)でリサイクル募金(ぼきん)を集(あつ)めております。

募集(ぼしゅう)の対象(たいしょう)は、本(ほん)、CD/DVD、切手(きって)、ハガキ、年賀状(ねんがじょう)、テレフォンカード、ゲーム、骨董品(こっとうひん)、ブランド品(ひん)、懐(なつ)かしのおもちゃなどなど。

 

取り扱い品目

 

不要品(ふようひん)を捨(す)てずに「国際協力(こくさいきょうりょく)」へ活(い)かす活動(かつどう)にぜひご参加(さんか)ください!

 

ご寄付(きふ)の方法(ほうほう)、ご送付先(そうふさき)などの情報(じょうほう)は、以下(いか)の「リサイクル募金(ぼきん)を詳(くわ)しく見(み)る」をクリックすると、ご覧(らん)いただけます。

 

リサイクル募金(ぼきん)を詳(くわ)しく見(み)る

 

image00008.png

 

ご不明(ふめい)な点(てん)は、事務局(じむきょく)までお気軽(きがる)にご相談(そうだん)ください。

info@efa-japan.org

 

特定(とくてい)非営利(ひえいり)活動(かつどう)法人(ほうじん)エファジャパン  

発行人(はっこうじん):伊藤(いとう)道雄(みちお)  

〒102-0074  東京都(とうきょうと)千代田区九段南(ちよだくくだんみなみ)  3-2-2    九段(きゅうだん)宝生(ほうしょう)ビル3階(かい) 

TEL:03-3263-0337 

FAX:03-3263-0338

Email:info@efa-japan.org

Web:https://www.efa-japan.org/