エファジャパン

エファパートナーになる

ニュース

2018.07.25 更新

みんなが一緒に暮らしていける社会をめざして

みんなが一緒に暮らしていける社会をめざして
「神戸金史×エファジャパン」-神戸金史さん講演会の報告

今年6月に行なった、エファジャパン主催のイベントのご報告です。こちらと同じ記事は、エファジャパンの季刊広報誌「えんぱわ」の最新の50号にも掲載されています。

エファジャパンの思いと…

 エファジャパン(以下エファ)は、ベトナム・ラオス・カンボジアで、子どもたちの教育支援や障がい児支援を中心に活動を行なっています。特にベトナムでは、ベトナム第四の都市と言われるハイフォン市で、市内にある障がい児クラブの支援を市ソーシャルワークセンターと協働で行なっています。本年からは障がい児支援をさらに充実させるため、自閉症スペクトラム障がいの子どもたちの調査を開始する予定で、今後、自閉症児支援を行なう計画を持っています。

 「すべての人々に、力を。」という大きなミッションを掲げるエファと、「みんなが一緒に暮らしていける社会をめざして」という思いを持ち取材活動を続ける神戸さんの間には、海外と国内という状況の違いを越えて、共通するテーマがあるはずです。また父親として、取材者として自閉症に関わり続けている神戸さんの経験を聞くことは、エファの今後のベトナムにおける支援活動の大きな参考になり、さらに多くの人たちに「みんなが一緒に暮らせる社会」について考えていただきたいと考え、このイベントを企画しました。

=エファジャパンの支援地地図

「相模原殺傷事件」と金やんと

 講演会の冒頭、3枚の衝撃的なイラストが会場のスクリーンに映し出されました。2枚は色彩鮮やかな龍や鯉をモチーフにしたような抽象画、そしてもう1枚は、ヘッドギアのようなものを付けて、苦しんでいるような人の顔。
 昨年秋、「障がい児の父であり記者でもある私に、なぜあなたがあのような事件を起こしたのかを話してみませんか?」と、神戸さん自らが「相模原殺傷事件」の被告に面会の申し込みの手紙を書きました。その返信の手紙と一緒に、それらの絵も同封されていたそうです。特に3枚目に映し出された人の顔の絵について、「事件の際に命を奪った障がい者を描いたものだそうです。彼の眼には、障がい者がこのように映っていたのです」と、説明されました。返信には「会います」とあり、日時が指定されていたそうです。神戸さんは、被告との面会に向かいました。
 事件発生当時、被害者の名前や写真は、障がい者ということが主な理由で、公にはされませんでした。一方で、逮捕時に笑顔を見せていた被告の姿や、「障がい者は生きている価値がない」といった被告の主張だけが報道を通じて広がっていく様子に、神戸さんは違和感を覚えていたそうです。
 その後、自閉症である長男とのこれまでの生活についての話に続きました。
 自らが、長男の金佑君-金やんが誕生し、ずっと障がいを認めたくなかったこと、妻との葛藤、金やんと会話している夢が覚めた後の罪悪感、次男への思い…。時としてユーモアも交えた飾らない、父親だからこそ、記者だからこそ、そして今だからこそ話すことができる神戸さんの様々な思いに、参加者のみなさんは耳を傾けました。

 

神戸さんの思い

 続いて13年前、自らが制作したテレビドキュメンタリー、「うちの子~自閉症という障害を持って~」(※)が上映されました。上映後、神戸さんは現代社会についての思いー障がい者や国籍などが違う人たちを認めない、彼らへの憎悪を煽る風潮への危機感を話してくれました。
 「息子と過ごす日々を通して、今は彼の成長を愛おしく感じています。障がい者には顔も名前もあるとの趣旨で障がいのある子の親から写真と名前を寄せてもらい、僕がSNSで発信した詩に友人のミュージシャンに曲を付けてもらい、彼に歌ってもらった歌と合わせてネットで配信しています。これは相模原殺傷事件へのアンチテーゼだと考えています。事件の被告が発し、その後報道などによって拡散されてしまった障がい者への憎悪について私たちはどのように捉え、どんなメッセージを伝えていけばよいかを、これからも考えていきたいです」

=神戸さんの話に聞き入る参加者

みなさんからのメッセージ

 「みんなが一緒に暮らしていける社会」について考えよう、というテーマで開催した今回のイベントには、多くの方々が集まってくれました。終了後、みなさんに感想をお聞きしました。一部ですがご紹介させていただきます。

「子どものために命を絶つ親、大切な親に命を奪われる痛ましい事が起こらない社会になって欲しい」
「諦めないこと、続けること、気づくことの大切さを改めて感じました」
「私たちは皆、障がいを持つかもしれない存在です。そのような視点から見れば、そして最後に聴かせてくれた歌を聞けば、皆が優しくなれるかもしれません」
「このイベントのように、自閉症、またそれに関わる社会の受け入れ態勢や親の状況、メディアの状況などのことを知る機会があれば良いなと思いました」

 参加していただいたみなさんの心に中に、様々なものを、神戸さんのお話しは残してくれたようです。
 エファも冒頭で紹介した通り、本年よりベトナム・ハイフォン市で自閉症児の調査に取り組む予定でいます。今回の神戸さんのお話しを糧に、ベトナムの子どもたちへの支援を、しっかりと行なっていきたいと考えています。

=講演会には多くの方々が参加してくれました

※講演会で紹介された神戸さん制作の番組は、下記のURLから視聴できます。
http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye3118996.html

エファジャパンの季刊広報誌「えんぱわ」は、会員のみなさまにお送りしている他、自治体の国際協力協会やボランティアセンターでもお読みいただけます。 この記事が掲載されている最新の50号には、その他にも神戸さんのインタビュー記事やエファジャパンの活動報告なども掲載されています。